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プロジェクトストーリー

PROJECT STORY

問いを分かちあい、
答えを組み上げた
協働開発の足跡。

島川製作所のもとには、どこか1箇所で「できない」と断られたような、難しい相談が届きます。
前例のない仕様、厳しい環境基準、現場でしか分からない使い勝手の悩み――。

それら1つひとつの問いに対し、技術者がどう悩み、どう手を動かして形にしてきたのかをご紹介します。

大風量・低濃度排気処理への挑戦 PROJECT.01

20年以上経っても現役。
未知の領域だった
「大型VOC処理装置」の実機化

大気汚染防止法の強化や企業の社会的責任(CSR)が問われるなか、ある印刷工場から寄せられた「大型VOC処理装置」への挑戦は、
私たちの技術を大きく飛躍させる転換点となりました。

依頼の目的

14ラインにおよぶ大規模な印刷工程から出る、膨大なVOC(揮発性有機化合物)ガス。これを環境基準に則って確実に処理しつつ、現実的な運用コストに収めたい。

きっかけと背景

印刷工場の排気量は、最大で毎分2700立方メートル(2700㎥/min)。
大気汚染防止法の遵守はもちろん、企業の社会的責任(CSR)を果たすためにも、この大風量を安定して処理する仕組みが急務となっていました。
さらには、これだけの風量を動かし続けるための燃料代をどう抑えるか。

お客様は、「安定稼働」と「経済性」の板挟みに悩まれていました。

支援項目

前例のない大型設計 従来の100倍を超える排気量に対応する装置の構築
高度な風量制御 14ラインの稼動状況に合わせた精密なコントロール
保守性の追求 長期稼働を見据えた独自のメンテナンス構造
納品後の性能維持 現場での不具合調査と専用マニュアルの策定

システム概要図


開発ストーリー

01. 「経験がない」
という壁を、
技術者の熱意で越える

当時、島川製作所が主に手がけていたのは、毎分25立方メートル程度の小型装置。
毎分2700立方メートルという規模を「本当に引き受けられるのか」と、社内で慎重な議論が交わされました。
最終的には「お客様が必要とするものを、お客様の目線で作り上げよう」と団結。
培ってきた小型機の技術を応用すれば、必ず道はひらける
という技術者の確信を持って、開発に踏み切りました。

02. 14ラインの「動き」を
読み切る
風量制御

最大の課題は、工場の稼働状況によって排気量が激しく変動することでした。
常にフルパワーで装置を回せば、ランニングコストが膨大になり、経営を圧迫してしまいます。
そこで、大型装置では珍しかった送風機の「リニア制御」を採用しました。
14ラインそれぞれの排気状況を正確に把握し、必要な分だけを処理装置へ送る。
この精緻なコントロールには、長年の乾燥機製造で磨いてきた「風量制御のノウハウ」が存分に活かされました。

03. 10年先を見据えた
「お客様目線」の設計

処理効率を高めるため、大風量のガスを1度濃縮してから燃焼させる「大型VOC処理装置」を開発。
メンテナンスを容易にするための「シリンダー型濃縮装置」や、高温でも安定した性能を保つ「パラジウム触媒」を採用するなど、現場の担当者が長く使い続けられる工夫を随所に凝らしました。

成果・結果

  • 処理効率95%以上を達成

濃縮と触媒燃焼を組み合わせ、膨大な排気をクリーンな状態へ。

  • 運用の低コスト化

精密な風量制御が功を奏し、懸念されていたコストを大幅に抑制。

  • 20年を超える安定稼働

製品から2年後、性能低下の兆しが見えた際も即座に調査を行い、油分やシリコンの影響を特定。
専用のマニュアルを作成し、お客様と二人三脚で管理を続けた結果、20年以上経過した今も装置は元気に動き続けています。

お客様の声

「当時は、これほどの大風量をどうやって経済的に処理するかが最大の悩みでした。
島川製作所さんは、工場の稼働状況を細かく分析し、他社にはない『リニア制御』を提案してくれました。
驚いたのは、納入から数年後に起きた不具合への対応です。
原因を突き止めるだけでなく、自分たちで管理ができるようにと写真付きの詳しいマニュアルまで作ってくれました。
丁寧なサポートがあったから、今もトラブルなく現役で動いているのだと感じています」

大型VOC処理装置
の納入事例

導入風量 2700 N㎥/min
導入ガス トルエン、メチルエチルケトン、アクリル酸エチル、イソプロピルアルコール、メタノール、アセトン
システム概要 低濃度、大風量で排気されるVOCを濃縮装置により高濃度、小風量に変換し効率的に触媒燃焼するシステム
触媒燃焼温度 350度
触媒 パラジウム触媒
処理効率 95%以上
安全対策 圧力異常、温度異常を監視し、異常発生時は装置を自動的に冷却、停止するシステムを採用

微細粉末樹脂材料の熱処理加工 PROJECT.02

1つの炉で「2つの温度と時間」を両立。
高品質・大量生産を叶えた大型ロータリーキルン

微細な樹脂材料は、熱の伝わり方が非常にシビアです。
1粒1粒に均一な熱を加えながら、いかに大量生産のラインに乗せるか。
品質と効率という、難しいバランスの維持に挑んだ事例です。

依頼の目的

粉末状の樹脂材料に対し、材料全体へ均一に熱を伝え、品質のバラつきを極限まで抑えること。
あわせて、歩留まりの向上と大量生産を同時に実現する加熱処理ラインを構築すること。

きっかけと背景

樹脂材料メーカー様は、粉末材料の加熱工程において大きな課題を抱えていました。
非常に細かな粉末であるため、単に容器に入れて加熱するだけでは全体に熱が伝わりきらず、品質が安定しません。

材料の1粒1粒に「完全に同一の温度履歴」をたどらせる。

極めて精度の高い熱処理と、それを維持したままでの大量生産という、相反する2つの要求に応える必要がありました。

支援項目

均一加熱構造の採用 粉末を螺旋状に攪拌しながら移動させる独自構造
高度な滞留制御 1つの炉内で「2段階の温度帯」と「異なる処理時間」を同時に実現
生産能力の拡大 従来比1.6倍の大型設計による大量生産体制の構築
現場目線のメンテナンス設計 汚れやすい樹脂材料の特性に合わせた清掃性の向上

システム概要図


開発ストーリー

01. 独自の「案内羽根」が
粉末を均一に導く

高品質な熱処理を実現するため、提案したのは「SGV型ロータリーキルン」でした。
回転する筒(レトルト)の内部に、案内羽根(GV:ガイドベーン)を螺旋状に溶接固定した独自の構造です。
この羽根に沿って粉末材料が攪拌されながら移動することで、材料全体にムラなく熱が伝わります。
さらに、ヒーターを細かく分けた「個別ゾーン制御」により、材料の進行速度や温度を緻密に管理する仕組みを整えました。

02. 1本の炉で「2つの時間」を刻む難所

プロジェクト最大の壁は、「2段階の温度帯で、それぞれ異なる滞留時間を確保したい」という条件。

通常、1本のレトルト内で場所によって材料の進むスピードを変えることは困難です。
そこで開発チームは、内部の案内羽根の間隔(ピッチ)に工夫を凝らすとともに、制御プログラムを調整
1つの炉内にありながら、場所によって材料の留まる時間をコントロールし、特定の温度帯で特定の時間だけ熱をかけるという高度な要求を解決しました。

03. 現場での「使い勝手」を実装する

装置を1.6倍に大型化するにあたり、微細な粉末が漏れ出さないよう密閉性を高めるカスタマイズを施しました。
また、樹脂材料の加工において課題となるのが、レトルト内部の汚れです。
掃除のしやすさを考えたレトルト形状の採用など、実際に装置を扱う担当者の目線を大切にし、毎日のメンテナンスが負担にならない設計を追求しました。

成果・結果

  • 徹底した温度管理

材料のバラつきを抑え、高品質な樹脂の安定生産を実現。

  • 大量生産体制の確立

装置の大型化と連続処理の最適化により、生産能力を従来比1.6倍に引き上げ。

  • 継続的な信頼関係

1号機の稼働とメンテナンス性の高さが評価され、その後2号機も継続して受注。島川製作所の熱処理ノウハウが凝縮された1台となりました。

お客様の声

「島川製作所さんのガイドベーン技術を知り、『これなら理想の温度管理ができるかもしれない』と相談したのが始まりです。
こちらの難しい要望に対し、真摯に向き合ってくれたことが印象に残っています。
特に『1つの炉で異なる時間と温度を管理したい』という条件は、物理的に困難だと思っていました。
それを内部構造と制御の工夫で解決してくれたことに技術力を感じました。
また、実際に使う現場の立場からすると、掃除のしやすさも本当に助かっています。
1号機の稼働がスムーズだったため、迷わず2号機もお願いしました。装置を作るだけでなく、現場の使い勝手まで含めて並走してくれる姿勢を信頼しています」

大型ロータリーキルンの
導入事例

装置名 SGV型ロータリーキルン
対象材料 高機能樹脂材料(微細粉末)
システム概要 案内羽根(GV)による螺旋攪拌、ヒーターの個別ゾーン制御
主な特長 1本のレトルト内で2段階の温度帯と滞留時間を精密に管理
カスタマイズ 従来比1.6倍の大型設計、高密閉粉漏れ防止構造
メンテナンス 現場での清掃性を考慮したレトルト内部形状

当社独自設計のSGV-0313ロータリキルン小型機が
『鋳造工学』の雑誌に
掲載されました!

MEDIA COVERAGE! 業界の枠を超え、環境分野の
熱処理プロセスでも高い評価

この度、本構造を採用した「SGV-0313ロータリキルン小型機」を納品させていただいたお客様よりご好評を博し、公益社団法人 日本鋳造工学会が発行する和文誌『鋳造工学』に事例として掲載されました。こちらの装置は、工場における鋳造用砂型廃砂の焙焼再生処理に活用。用途に合わせた最適な温度・時間・雰囲気制御をコンパクトな設計で実現しています。
当社独自の「SGV(ガイドベーン構造)」は、樹脂材料だけでなく、異なる業界の熱処理プロセスでも高い評価をいただいております。

酸化エチレンガス処理装置「PurEo」開発 PROJECT.03

ひとつの疑問が、
条例を動かした。
化学への探究心から
生まれた「PurEo」

かつて医療現場などの滅菌用に使われる「酸化エチレンガス」は、使用後にそのまま大気や排水へ放出されるのが一般的でした。
この状況に疑問を抱き、化学的な検証を重ねた結果、誕生したのが処理装置「PurEo(ピュレオ)」です。

依頼の目的

発がん性や毒性があり、爆発の危険も孕む酸化エチレンガス(EOG)を、安全かつ確実に分解・処理し、環境への放出を限りなくゼロに近づけたい。

きっかけと背景

酸化エチレンは、大気汚染防止法の指定物質です。従来、滅菌機から排水される際、水と反応して無害なエチレングリコールに100%変化すると信じられていました。
しかし、島川製作所の研究員は、「化学反応の過程」に疑問を持ちました。
自社で独自に滅菌機装置からの排水を調査し酸化エチレンガスを発見し、東京都に報告。2003年に東京都環境科学研究所による病院周辺の下水調査で高濃度の酸化エチレンガスが検出されました。

この事実がきっかけとなり、のちに大阪府で環境条例が策定されるなど、社会全体が排出抑制へと動き出すことになりました。

支援項目

排出実態の調査・測定 排水中に残存する酸化エチレンガスの検出と立証
安全な処理方式の考案 爆発のリスクを抑えた独自の処理システム
低温触媒技術の開発 従来の高温処理を覆す、安全で効率的な触媒燃焼
監視システムの構築 濃度や温度、圧力を常時監視する安全設計

システム概要図


開発ストーリー

01. 化学の「定説」を
疑うことから始まった

当時の業界では「酸化エチレンは水に溶ければ無害になる」というのが定説。
しかし、現場のわずかな違和感を見逃さず、徹底的に排水を調べ上げたことがすべての始まりでした。
有害物質がそのまま流されている事実は、環境保護を使命とする技術者にとって、見過ごせない課題となりました。

02. 爆発のリスクと
隣り合わせの検証

酸化エチレンは反応性が高く、濃度が上がれば重合反応を起こして爆発する危険があります。
安全な処理方法を模索するなかで着目したのは、「酸化エチレンが無限に水に溶ける」という性質でした。
1度水タンクにガスを吸収させ、そこから少しずつガスを取り出し、濃度を一定に保ちながら触媒で燃焼させる「水溶解濃度緩衝方式」を考案
これにより、爆発の危険を回避した安全な処理が可能になりました。

03. 命がけの成果を、
ひとつの装置へ

さらに、独自の専用触媒を開発したことで、従来は高温でしか処理できなかったガスを、より安全な低温域で分解することに成功しました。
こうして誕生したのが、酸化エチレンガス処理装置「PurEo」です。

濃度計や感震計など、あらゆるセンサーで運転状態を監視し、異常があれば即座に安全に停止します。
まさに、技術者が文字通り命がけで挑んだ検証の成果が、「PurEo」に凝縮されています。

成果・結果

  • クリーンな排気を実現

排気濃度0〜1 ppmという、ほぼ完全な除去を達成。

  • 環境条例の策定に貢献

島川製作所の調査結果が、行政の環境対策を動かす後押しに。

  • 医療・化学現場の安全を確保

病院や工場において、働く人と周辺住民の健康を守る標準的な設備として普及。

お客様の声

「酸化エチレンガスの有害性は認識していましたが、これまでは『水に流せば大丈夫』という言葉を信じるしかありませんでした。
島川製作所さんが排水の実態を明らかにし、安全な処理装置を開発してくれたことは、私たち現場の人間にとっても大きな救いです。
特に『PurEo』は処理するだけでなく、万が一の震災や異常時にも自動で安全に止まる仕組みが徹底されています。
命に関わるガスを扱うからこそ、ここまで真摯に『安全』と向き合っている姿勢を、心から信頼しています。
今ではこの装置が、地域環境を守るための欠かせないパートナーになっています」

酸化エチレンガス処理装置 PurEo のシステム概要

対象ガス 酸化エチレンガス(EOG)
処理方式 水溶解濃度緩衝方式 + 専用触媒による触媒燃焼
処理性能 排気濃度 0〜1 ppm(極めて高い処理率)
安全対策 EOG濃度計、温度、圧力、感震計による24時間監視
特長 爆発リスクを抑えた低温処理、周辺環境の悪化を検知する自動停止機能